「最後は感情情報が価値を持つ」清田いちるさんと語る、これからメディアに大事なこと

動画とVRの時代にいまさら音声?

そう思われる人のほうが多いのではないだろうか。

「斜陽産業と言われるけど、音声には可能性がある」と語っていたVoicy代表の緒方は、今年2月、3月に入って大型の資金調達を発表。

音声技術とメディアを強みとする「Voicy」は、これからどんな未来に接続していくのか。
さまざまな業界のプレイヤーをお招きして、音声の未来を拡張するトークセッション、第5回目のゲストは清田いちるさんです。

いちるさんはインターネット元年からIT業界に従事し、ニフティでブログサービス「ココログ」を立ち上げ、ポッドキャストにも乗り出しました。その後は2012年まで初代ギズモード編集長をつとめ、現在は動画メディア「bouncy」を率いるなど、多様なサービスやメディアの企画を通してインターネットの文化を作り上げてきた存在です。

多くのメディアを立ち上げてきた清田いちるさんから見た音声の可能性や未来を、Voicy代表・緒方との対談で探っていきます。

メディアにおけるベクトル、テクノロジーと世の中の変化率

緒方:いま、いちるさんはbouncy(バウンシー)の編集長ですよね。僕もめちゃくちゃ見ています。

ニフティ株式会社にて数多くのサービスを立ち上げる。特に「ココログ」は国内初の本格的商用ブログとして、ココログ内の「眞鍋かをりのここだけの話」は初の「ブログの女王」として注目された。2006年に退社後、「ギズモード・ジャパン」を立ち上げ、初代編集長を2012年まで務める。同時期にシックス・アパート株式会社に入社。新規事業担当シニア・ディレクターとして「Zenback」「ShortNote」など様々なサービスやメディアの企画を行う。2018年1月に株式会社Viibarに参画し、bouncy編集長に就任。

いちる:ありがとうございます。bouncyは1分くらいの動画を流してるんですけど、未来を感じるという意味で「フューチャーリスティック」とよく言っています。

見たあとに「こんな未来がくるんだったら結構楽しそう」くらいの、ちょっといい気分になってもらえたら嬉しいですね。

Viiberが運営するbouncy(バウンシー) http://bouncy.news

緒方:テクノロジーへの愛をすごく感じます。

いちる:商品やテクノロジーをそのまま紹介するのではなく、どんな未来を運んでくるのか、それらが社会をどう変えるのかを伝えることを意識しています。

テクノロジーは明るい未来や、社会のいい変化を表現するのに一番合っています。なぜならテクノロジーは絶対に戻らない

緒方:面白いですね!世の中の変化率で勝負をしているところがいい。

いちる:僕らはベクトルを持っていると表現していて、bouncyの提供する動画はベクトルの先、つまり明るい希望のある未来を感じられるかを意識しています。

緒方:なるほど。コンテンツの選定の基準はありますか。

いちる:全部僕がチェックしています。技術的に優れたものでも、先に明るい希望ある未来が想像できないのであれば、紹介しません。

明るい未来の可能性を発信して、20年後も僕らの生活は楽しいぞ!と思ってもらえることをゴールにしています。

緒方:bouncyに限らず、いちるさんは日本のインターネットの歴史がそのままキャリアになっているような存在です。

ブログの商用化を広げて、日本で初めてのポッドキャストサービスの立ち上げにも参画していますよね。日本初をこんなにやってきているというのが、羨ましいです。

いちる:ブログを日本にもってきたことは現在に繋がるキャリアで、エポックメイキングでしたね。最初に商用利用をスタートしたことが大きかったです。

緒方:ブログが一斉に広がったきっかけは何だったんですか。

いちる:眞鍋かをりさんのブログがヒットしたのが大きかったです。彼女は芸能人にしては当時珍しく、匿名でご自身のサイトを運営して、文章を書かれていたんですよ。

あとは、とにかくブログを知ってもらうために、芸能人や社長に書いてもらったり、ブログを書籍化したり、ファクトブックをメディアに配ったり、駅前でティッシュを配ったり……。

緒方:新しいサービスの初期ユーザー獲得は本当に大変です。僕も声を変えてVoicyで4つのチャンネルを配信していたのを思い出しました。

いちる:やばいですね(笑)

グロースハックの鍵はストックコンテンツのシェア

緒方:これまでさまざまなインパクトある仕事をされてきたいちるさんから見て、今後どうやったら音声が面白くなると思いますか?

いちる:Voicyは1回ハマるとすごく好きになるし、がっつり聞くようになる。この熱量をSNSとかで誰かに伝えられるような仕掛け、まさにグロースハックの仕組みをVoicy自体にどう入れ込むかですね。

例えばVoicyを聞いていると、「あ、いま名言出たな」と思うときがいっぱいあります。その瞬間にタップして、前後20秒〜30秒をブックマークしておける機能とか。後でいつでもそれ聞き返せるといいですよね。

緒方:なるほど。

いちる:ブックマーク機能自体にはそれほど拡散効果はありません。流れていってしまうのがもったいないというコンテンツをどうストックするか

緒方:ストックという観点では、Voicyでは過去の放送もよく聞かれていて、パーソナリティーさんがすごく喜んでくれます。いままでの積み重ねも大事にされているというか。見える化してけたらいいなと思っています。

いちる:いいですね。次はそれを知ってほしい人にどう届けるか。音声のままかテキスト化して、SNSやLINEで送れるようにしてもいいですね。受験生に「これ良い話だったから聞いて」とパッと投げられるような仕掛け。

緒方:すごくいい広がり方ですね。まだ音声に対してベストなフォーマットがわからないというのもあって、広告を打ったりもしていなくて。

いちる:僕だったら読者とのインタラクションは絶対作りたい。ユーザー同士のインタラクションは何かを活性化させるキーになります。

例えばライブ配信のハート「♡」をとばせる機能は、リスナーが「好きって言いたい」という気持ちをサポートします。Voicyでもトークの盛り上がりやハートのヒートマップが見えるとか、あったら面白そうです。

緒方:いままさにデザイナーが悩んでるポイントです。リスナーがいかに何もせず聞ける状態をどこまで残すか。一方でリスナーの愛情や反応をどうやってパーソナリティーに届けるのか。どのバランスが音声のあるべき姿なのか。

企業参入に開けたメディアの3要素

緒方:新しくメディア立ち上げる時に、社会性、ブランディング、マネタイズの3つがないと企業が参入してこない。メディアが成り立つためには企業の参入は必要だと考えています。

ちまちまユーザー課金でハックしてしまうと、小銭集めサービスになってしまって、企業が入ってこない。

いちる:それだけにはなりたくないですよね。課金、課金みたいな。

緒方:そもそも広告自体も素敵でありたい。速攻コンバージョンするものじゃなく、じわじわ何回聞いてもストレスがないことを強みにして、ブランドリフトする音声広告が理想です。

いちる:うんうん。賛否両論あると思うけど、一部のソーシャルゲームがガチャで儲けてて、悪の象徴とか言う人もいるけど、ファンの「大好き!」みたいな熱量を表現している、という側面が大きいのも事実なんですよね。

ユーザー課金は別として、Voicyやコンテンツについて話す人がもっと増えるといいですよね。パーソナリティーにとっても、Voicyにとっても幸せな状況だと思う。

音声メディアにおけるヒューマニティーの価値

緒方:これからIoTの流れがきて、あらゆるものが通信デバイスになり、どこからでもメディアに接続できる世界が来ると思っています。いちるさんのご意見を聞いてみたいです。

いちる:僕の感性が囁いているのは、2〜8年後にグラス(メガネ)の時代がくるということ。いまデバイスの中心はスマートフォンだけど、すべての情報が集約される中心がグラスにくる可能性があると思っています。

グラスの時代って実はユーザーインターフェースの中心に音声があります。曖昧に言ったことを正確に判断できれば、メインの入力は音声になるかもしれません。

緒方:昔はテレビで、いまはうつむいてスマホばっかり見ている。これからすべてのモノが音声の出るデバイスになって、スマートスピーカーすらなくなるかもしれない。確かにグラスは相性よさそうです。

緒方:声で室内照明のオン/オフするようにしたら、生活のファーストリーチは絶対声だとあらためて実感したんですよ。耳が音声に慣れたら、セカンドリーチはエンタメやメディア、Voicyはそこに張っています。

わざわざ音声から視覚に切り替えないし、「電気消して」と言ったあとに「今日はこのニュース聞いておきます?」と言えるようにしたい。

いちる:そのあとのアプローチも興味深い。音声でしか活躍できないパーソナリティーって、いっぱいいると思います。テキストだけだと冷たい、顔にはあまり自信がない。でも声だとこんなに柔らかいんだ、みたいな。

そういうパーソナリティーをどれだけ見つけられるのか。エンタメのVoicyの最初の勝負どころ。

緒方:うんうん。ほとんどものが機械によって提供されて、人間性が希薄になって、寂しさは大きくなっていくと思います。となると、最後は感情情報がすごく価値あるものになるんじゃないかな

いちる:感情は人間が出せる最後のものかもしれない。声は感情が乗りやすいから、音声データを集めると、感情分析が進みそうです。

「嬉しいことがあったのかな」とか「今日は弱っているな」とか、感情に寄り添って出すコンテンツを変えたり。すごく人間みのあるデータ活用ができるし、音声という世界で可能性がありますよね。

緒方:僕らのビジョンは、「音声とテクノロジーでワクワクする社会を作る」なんですが、音声は特に人間性の部分を担っています。

基盤となるテクノロジーを掛け合わせて、とにかくワクワクすること作ろうと。そんな未来を目指すメンバーに、最後に一言いただけますか。

いちる:音声とテクノロジーで、どういう未来をつくれるか誰も見えていません。それが実装できたら、自分の大きな名刺になると思うので、Voicyの皆さんは自分が自分の名刺を作っているんだという気持ちで、まったく世の中にない新しいものをうっかり作っちゃってください。


Voicyでは今後も様々なキーパーソンをお招きして、音声の未来に関する勉強会を開催します。引き続きレポート記事でも公開していきますのでお楽しみに。

ライター:名和実咲
食やデザインを軸にwebメディア、紙媒体、SNSでのライティング、撮影、編集に携わる。BAKE Inc.に所属。ときどきフィルムカメラ。(@miiko_nnn

この記事はVoicyJournalの転載です。

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